ピンチや危機。
こういったものをどのように捉えるか。捉え方で行動も変わってきます。
そんなことを、『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』などから考えてみたいと思います。
この『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』は、衰退の五段階とあるように、衰退していく企業の段階について探っています。衰退していく企業は、似たような段階を経て、消滅する。そういうことがわかる一冊となっています。
衰退の兆候や段階を、どのように見て対応するかで、消滅するのか復活するのかが変わってきます。
危機は素晴らしい機会
「ディック・クラークはメルクの製造部門を長年率い、レイ・ギルマーティンの後にCEOになった指導者だが、「危機は素晴らしい機会であり、無駄にするのはとんでもないことだ」と語っている。」(p.194)
誰も、危機やピンチに陥りたいという人はいないでしょう。企業も同じで、わざわざ危機を招きたいという企業もないでしょうし、衰退したいという企業もないだろうと思います。
しかし、危機に陥ったとしたら、それを利用しない手はない。そういうことです。
もちろん、危機に陥ってもいないのに、危機を宣言する必要はないでしょう。むやみに、危機をあおって、従業員に不安をもたらしても、生産性が下がるなどしたら、悪い影響が出てしまうでしょうから。
だから、危機が迫っているのかどうか、見極めるということは大切です。危機が来たとわかれば、怠けてしまうということはなくなるので、自分の力をしっかり発揮しようとすることでしょう。
衰退が始まったらどうするか?
「すでに衰退がはじまっているのであれば、そして、正真正銘の危機に直面しているのであれば、一発逆転策にすがるサイクルから早く抜け出すほど良い結果が生まれる。回復への道は何よりも、健全な経営慣行と厳格な戦略思考に戻ることにある。」(p.196)
衰退している企業は、衰退の第4段階、つまり消滅の瀬戸際にあって、一発逆転に頼る傾向があるということです。これまでの失敗を取り返そうとするあまり、大きな成功を狙ってしまうのでしょう。
ホームランを狙いたくなる。そういうことです。
そして、そのような一発逆転に頼ると、失敗してしまうと、取り返しがつきません。だから、一発逆転を狙うのではなく、規律のある財務改善やマーケティング施策などを行うことが大切ということです。
イノベーションを積み重ねる
成功している企業は、一つのイノベーションではなく複数のイノベーションを組み合わせている。
ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10
- 作者: ラリー・キーリー,ライアン・ピッケル,ブライアン・クイン,ヘレン・ウォルターズ,平野敦士カール,藤井清美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2014/02/20
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こちらの『ビジネスモデル・イノベーション』を読むと、成功している企業は、一発逆転でうまくいっているというのではなく、いくつかのイノベーションの組み合わせで、他者と差別化し、顧客に受け入れられているということがわかります。
うまくいっていないときは、その反動で、大きく狙って成功したいと思ってしまいがちになるのでしょう。そこを考え方を変えて、「中ぐらいの成功」をたくさん狙う、つまり現実的に達成可能なことを増やしていくとすると、現実を変えていくことができるようになっていくわけです。
危機にあると、早く危機から脱したいということで、安易な方法を選んでしまう。普通の精神状態ではないからでしょうか、意思決定が雑になるのかもしれません。
そうならないで、現実的にできると思えることを行なっていくことが、危機を脱するには有効になるはずです。
危機を活かす
個人の話として考えてみると、危機がないとあまり動こうとは思わないのではないでしょうか。そして、企業も同じというか、個人以上に危機がないと、変えようとは思わないでしょう。人が複数人いると、どうしても、周りに頼るということになりがちで、誰かがやってくれると思ってしまうことがあるでしょうから。
そう考えると、危機は、企業にとっても、個人にとっても、変わる機会である。こう言えるのだと思います。
だから、先述のメルクのディック・クラーク氏の言葉になる。危機を活かさないのは、もったいというわけです。
ビジョナリー・カンパニー3 危機を認識し、必要な手を打っていく
危機を活かすには、まず危機がどんな危機なのかを認識することでしょう。
会社であれば、現金がないのか、売上が減っているのか、人材が足りないのか、それともそれら全部なのかなどです。そこから必要な手を一つずつ打っていく。
ここで、焦りすぎないで、一発逆転を狙うのではなく、確実に必要なことを実行していく。それが、危機を活かして、変わっていって、復活していくための道につながっている。
この『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』を読むと、このような方向性の大切さがわかります。
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